◎内山産業の日野町に対する思い
私は、古民家が好きで古民家の取り扱いを始めて10年以上になりますが、今まで数多くの古民家を見てきた中で、特に、滋賀県蒲生郡日野町の近江日野商人の古民家の素晴しさに心を奪われました。
古民家も色々有りますが、日野町には近江日野商人さん達の貴重な古民家が残っており、それらの多くは江戸時代末期から明治、大正時代に建築され、良い材木が使用された、素晴らしい屋敷です。
その特徴として、内蔵が必ず有り、欅の蔵戸を開けると欅の階段箪笥が有り、当時の繁栄さを感じさせられます。
母屋には、地松の差し鴨居、巨木の梁、欅の大黒柱、玄関敷台には欅の一枚板が使用され、その様相はお城を彷彿とさせる様な造りで中にはお茶室が有る家も有ります。
敷地の広さ、家の大きさ、門構え、間取りの多さ、構造は、殆どの家が合掌造りで建築され小屋裏も広く取り、屋根裏を上手に使う近江商人の知恵が生かされるだけでは無く、瓦葺屋根全体を見渡した時の美しさが、煙抜出し櫓と融合して、調和のとれた姿になっています。
襖の引手には七宝焼き等、美術品を思わせるところが見受けられる他、襖紙も唐紙、襖の障子も本鍬が使用されている事も有ります。建具の柄や模様も古典的な美しさが有り、桟等には銀杏面が施され大正ロマンを感じさせられるガラスと調和して大変、貴重です。特に素晴しいのが母屋の奥に建てられた客人接待用の奥座敷です。
お助け普請の精神で建築された奥座敷は、材木から畳に至るまで吟味に吟味を重ね予算を惜しまず用いられている処に感銘しました。
その古民家が年々解体され更地に成り、アパートやマンションに形を変え、歴史有る日野町の町並みが少しずつ消えつつあります。
今では、日野まちなみ保全会の会員として古民家の保全活動を行い、日野祭りなどにも参加し、歴史ある日野町の街から1件でも多くの古民家を守りたい思いで活動を行っております。
この素晴らしい日野町の古民家を、現代に生かせる住空間として皆様に知っていただき、歴史の継承を担っていただきたいと切望しています。